臨時作家

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現代の北鎌倉の古武術道場を舞台にした推理小説です。この小説は群像劇スタイルの推理小説で、さまざまな年代の人物が数多く登場します。




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主にシナリオセンターでの課題にそった過去のシナリオ作品です。舞台はすべて現代。ジャンルはさまざまです。




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雑多な所感を書き綴っています。神坂の性格上、ほとんどコメディになってしまっていますが……。




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このサイトについて


神坂ノベルの創作小説と映像シナリオを紹介しています。小説において過激な描写はありませんが、カタルシスに陥りたい作者はメインとなる男性すべて美男でまとめております。とくに男性の読者さま、鼻につくほどイイ男でも気になさらずに物語を愉しんでいただけたら幸いです。 映像シナリオは過去に通っていたシナリオセンターの課題として執筆したものがメインです。




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第67話

 周一郎は座りなおすとスクラップブックをめくりだした。当時の新聞やらゴシップネタに近い週刊誌まで、大小の記事が丁寧に貼り付けてあった。
 一枚一枚丁寧(ていねい)にめくる周一郎の横顔を、建はまんじりともせず眺めていた。時折、周一郎が手をとめ記事に視線をはしらせる。最後まで目を通すと、周一郎が指で押さえていたページをふたたび開いた。
「この記事なんですが」
 身をかがめ記事をみる。周一郎の意図がすぐとわかった。
「この記事にだけは若先生のことが書かれてありますね」
「ぼくも、気になってはいたんですけど」
「若先生が事件当夜、家にいたとあります。思い当たる人物はいますか」
「え」
「道場関係者、もしくは当時、この家に出入していた人物がリークしたと考えたほうが自然でしょう」
「ぼくが、当日、家にいたことを知っている人」
「そう」
 霞がかった記憶の断片をたぐりよせる。事件当夜、屋敷にいた人物のほとんどは死亡している。残っているのは建と仁志だ。だが、仁志がそんなことをするはずがない。
「若先生?」
「おもいだせなくて……」
 歯がゆかった。だがどうしようもない。建の記憶は新聞や週刊誌に裏づけされたものであり、それ以上の情報をひきだすのは、所詮、無理なことなのだ。
 周一郎が肩に手をのせ、わずかに口をほころばせた。温雅な微笑だ。これが本当の周一郎なのだろうか。だがすぐとその考えを打ち消す会話が脳裏をよぎった。
『あいつは女さえ絡まなければ頼りになる』
 桂介の言葉だ。
『女?』
『十八になったら教えてやる』
 気がつくと、周一郎が興味深げに室内を見渡していた。
 中庭に面した窓の脇に古びた欅箪笥(けやきだんす)が置かれており、その上に鎮座する豪華な金蒔絵(きんまきえ)の刀掛けがひときわ目をひく。刀掛けには中傳印可(ちゅうでんいんか)の祝いとして弥隅から贈られた刀が刀袋にはいって置かれていた。部屋の隅には小さなテレビモニターとハードデッキ、その脇にある机のうえにはノートパソコンが一台。シングルベッドの脇にはコンポステレオが置かれてある。
 周一郎が視線をもどしてくる。建が掛けることばに戸惑っていると、周一郎がさっと腰をあげた。
「記憶、取りもどしたいですか」
「……はい」
「つらい記憶かもしれませんよ」
「それでも、ぼくの一部ですから」
「河勝先生は、ひょっとしてご存知かもしれませんね」
「………」
「ねえ、若先生」
「はい」
「これからぼくが言うことを、河勝先生にいってみてもらえますか」
「……はい」
「でもこれは、ぼくの言葉としてではなく若先生の言葉として言って欲しいんです」



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